2022年5月12日、スリランカが経済危機により破綻しました。
2022年7月5日には、ラニル・ウィクラマシンハ首相が国の破産を宣言。
これにより、ネットでは「スリランカ 破産原因 中国」というキーワードが再び話題になっています。
そして、ゴーターバヤ・ラージャパクサ大統領が国外に脱出。
それにより、全土に非常事態が宣言されるなど、スリランカは大混乱に陥っています。
この記事では、「スリランカ 破産原因 中国」が何を指すのかを解説していきます。
スリランカの破産原因は中国の「債務の罠」も影響
結論から言います。
日本や各国からの、スリランカ支援計画。
それを、スリランカは再三にわたって、土壇場で中国へと鞍替えしてきました。
そして、スリランカ国内のムダなインフラ投資も重なり、増え続けた中国への借金。
ついには、莫大な金額に膨れ上がり、返済ができなくなるいう中国の「債務の罠」に陥ります。
この構図が、「スリランカの破産原因は中国」も影響しているということで話題になりました。
順を追って説明していきます。
スリランカの経済成長
スリランカは2007年から、インフラ整備のプロジェクトを積極的に推進。
そして、2009年の内戦終結後、それによる経済成長政策を本格的に実施してきました。
資金自体は、国際市場から継続して調達。
発電所や道路、港湾などのインフラを次々に建設し、雇用も生み続けました。
その結果、GDPが急激に成長する結果に。
2000年と比較すると、1番高かった2018年の1人当たりのGDPは、なんと約4.6倍に達します。
参照:国連統計部
しかし、このインフラ整備にはムダなものが多く、スリランカの破産に繋がっていきます。
ラージャパクサ一族による政権の私物化
順調なGDPの成長とは裏腹に、放漫な経済政策によって国自体が揺らいでいきます。
まずは、歴代のスリランカ大統領をご覧ください。
代 | 大統領名 | 在任期間 |
---|---|---|
1 | ウィリアム・ゴパッラワ | 1972年5月22日~1978年2月4日 |
2 | ジュニウス・リチャード・ジャヤワルダナ | 1978年2月4日~1989年1月2日 |
3 | ラナシンハ・プレマダーサ | 1989年1月2日~1993年5月1日 |
4 | ディンギリ・バンダー・ウィジェートゥンガ | 1993年5月1日~1994年11月12日 |
5 | チャンドリカ・クマーラトゥンガ | 1994年11月12日~2005年11月19日 |
6 | マヒンダ・ラージャパクサ | 2005年11月19日~2015年1月9日 |
7 | マイトリーパーラ・シリセーナ | 2015年1月9日~2019年11月18日 |
8 | ゴーターバヤ・ラージャパクサ | 2019年11月18日~ |
お気付きでしょうか。
第6代と第8代に「ラージャパクサ」の名前があります。
実は、血縁関係があるどころか、実の兄弟のお2人。
第6代の「マヒンダ」氏が兄。
Twitterアカウント
第8代の「ゴーターバヤ」氏は弟にあたります。
Twitterアカウント
しかも、兄が大統領の時は、弟を首相に任命。
その逆もしかりで、弟が大統領の時は兄が首相になど、有力ポストを一族で固め続けてきました。
✔ 近年のスリランカ政府は、この兄弟を筆頭とするラージャパクサ一族が支配してきた
✔ そして、ムダなインフラ投資は、このラージャパクサ一族に起因するものが多数
ムダすぎるインフラ整備
GDPの成長とは裏腹に、実はインフラ整備の中には不要すぎるのが数々存在。
例を挙げるとこちら。
ハンバントタ港
経済の中心地であるコロンボより、約250kmも離れている場所。
明らかに採算が低いことがわかっていながら、中国から資金提供を受けて建設しました。
開業後、当初の目論見通りに、この港を利用する船舶が圧倒的に少なく、経営不振に陥る羽目になったのです。
✔ 結果、借金返済の埋め合わせのため、同港を中国へ99年間リースすることに
マッタラ・ラージャパクサ国際空港
その名の通り、マヒンダ・ラージャパクサ大統領が自身の地元に建設した空港です。
県都のハンバントタから北に15kmほどの距離にあります。
そのため、いわゆる田舎町で、1日あたりの平均乗客は10人以下で定期便もありません。
この空港も、建設費の90%が中国からの融資で建設されています。
✔ 結果、「世界一、寂しい国際空港」という不名誉なあだ名が付くことに
中国に鞍替えしたインフラ計画
そして、前述の通り、数々のプロジェクトでも日本や各国からの支援計画がひっくり返されてきました。
こちらも例を挙げます。
次世代型路面電車(LRT)整備計画
日本の技術支援により、鉄道計画や道路整備を行って渋滞問題を解消しようとした計画です。
このプロジェクトに関しては、詳しくは下記の記事で解説しています。
この記事と併せてご覧ください。
スリランカの日本への【裏切り】って何?わかりやすく解説してみた

コロンボの港湾開発事業
コロンボ港の東コンテナターミナル。
2019年5月、それを日本とインドと共同開発する覚書を交わしていました。
しかし、ゴーターバヤ・ラージャパクサ大統領がこの計画を再びひっくり返します。
2021年5月には、一転してスリランカ単独の全額出資で運営することを閣議決定。
そして、2021年11月、スリランカ政府がこの事業自体を中国企業に発注すると発表したのです。
デフォルトに追い討ちをかけた新型コロナウイルス
スリランカにとって、観光業は生命線でした。
特に、外国人観光客の動向はスリランカ経済に莫大な影響を与えます。
なぜなら、主要な外貨獲得産業とみなされていたからです。
ところが、2020年から広まった新型コロナウイルス。
これにより、スリランカへの海外観光客は皆無となり、この目論見も途絶えました。
参照:スリランカ観光開発局(SLTDA)
結果、外貨不足によって、ついにスリランカは他国への借金返済が滞りました。
その結果、デフォルトへと至ったのです。
まとめ
この記事では、「スリランカ 破産原因 中国」というキーワードについて解説しました。
2022年7月14日現在、経済危機によって混乱が続くスリランカ。
インフレや抗議デモも広がっています。
一刻も早く秩序を回復して、平和な毎日が訪れて欲しいですね。